一人だけど一人じゃない?書庫版

そこはもう無いけれど、私はそこに居たから。

Rへオレの精神的抗戦

ちわっす。初めまして……っすかね。コーヤっす。
誰だお前って方は人物紹介を見てくれればだいたい分かるんじゃないっすか。
別に分かんなくても差し支えないっすけど。

今回は前回のアナザーです(魔羽曰く)。
書いてみたら意外と……ほんとなんもないんすけど、でも若干アダルトな事っていうか、会話の中にちょっとそういう表現が入るんで苦手な人はブラウザバックで。
物語調に書くっすよー。


大丈夫そうっすか? ならどーぞ。






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「……R?」

 かけようとした声が勝手に上擦る。
 どうして、こうなった?


 今日のRはあの島にはいなかった。オレらがいるダンジョンみたいな構造の深い所にいた。
 本気で引きこもる時はもっと深い所にいてそこにはR以外誰も入れないから助かった。

 枝分かれした道が更に枝分かれしていく事で深まっていく途中の洞窟のような部屋。
 気配を感じて、Rがそこにいると直感した。

 普段通り「R」と呼ぼうとして、喉につっかえた。それで出だしのような言い方になってしまった。Rの姿が、豹変していたから。


 このシリアスシーンにこの喩えは非常にそぐわないとは思うけど、多分一番伝わりやすいから言う。
 赤い帽子で赤白のボールを投げながら君に決めたりゲットした事を高らかに宣言するナンタラトレーナーの少年と、彼と旅を共にする国民的有名人のねずみが想像つくだろうか。
 あのねずみがとんでもないボルトの電流を流す時があるだろう。あんな感じだ。

 身体は大きさこそ変わらないがシルエットがぼやけて動物のように見え、周囲に何かをバチバチと振り撒いている。床に脚を伸ばしぺたんと座った状態で、こちらに背を向けて丸まっていた。違う所は、身体も弾ける線も全て真っ黒である事か。

 黒い線を散らしながらRが振り向いた。よかった、届いていたらしい。
 顔もデフォルメというか、目と口だけ簡略化して白抜きされ、マスコットのようだった。

 オレを見つけるなりRは言った。

「魔羽に言われた?」

 ……目聡い。

「そんなにオレが来るのがおかしーんすか」

 心中を悟られないように悪態をついた。

 確かにここに来たきっかけは魔羽に言われたから。
 けど、ここに来た理由はそうじゃない。

「…なんで来た」

 諦めたのか、魔羽の事だから仕方ないと思ったのかは分からないけど、直接理由を尋ねられた。

 考える。けど数秒で止めて、Rの隣に座った。
 いつの間にか黒線スパークは収まっていた。

「…こういう時、考えるんすよ、なんて言ったら伝わるのか。けど、結局意味無いんすよね」

 Rが目を細める。オレを睨む。
 オレの言おうとした事が伝わったらしい、最悪な意味で。

 唐突に、Rが立ち上がった。
 そう思った次の瞬間オレの肩が地面に押し付けられた。
 見上げる視界にはRと天井。

 つまり押し倒された。
 Rの目の下の黒が裂けて、白が広がる。口を開けたんだ。

 デフォルメされた口は、輪郭がギザギザしてそれが牙になっている。なんとまぁ、実にイメージに忠実なデフォルメですこと。

「おなかすいた…」

 一層口を開けてRが言う。白が陰に染まりグレーになった所で、両腕をRの眼前に構えた。

「R……だめっすよ…」
「………コーヤは触れさせてくれないね」

 不満そうに言うRの身体が、少しずつ普段の輪郭に近付いて細まる。

 何が不満なんすか、R。

「他の人にすればいいじゃないっすか……アイツももうすぐ治るっしょ…それか〇〇君でもいいじゃないっすか」

 オレの台詞を聞いて、Rがまた向かってくる。
 頭を押したりする事もできるけど、防御に徹する。
 更に輪郭がはっきりしていく。けど、牙はそのまま。刺さりそうで恐い。

 唐突にRが止まった。オレを見据えてから、言った。

「お前“も”欲しい」

 こんのハーレムエンドが…!!

「オレは…ペットにはならないっすよ」

 Rが下を向いて、それから軽く笑ったのが聞こえた。
 その笑みを皮切りに、Rの姿が元の輪郭と重なる。

 白い肌に映える黒い髪と衣服。細い身体を隠すように重なるドレープの袖。人間の姿になっても耳のような三角のツノと先端に大きなスペード記号に似た形をくっつけたみたいな細い尻尾はそのままだ。その方が似合ってる、悪魔っぽくて。

 そこはいつも変わらないけど、性別は気分によって違う。今日は、男っぽい姿っすか。

 肩に触れない程度の髪が滑り落ちて、今はオレの額に触れそう。
 ツノと髪の境界は同化して見えない。明るい所で見てもそうだから、これは漆黒と言うに相応しいんだろう。もちろん尻尾も、果ては着ている服までも、Rは肌以外全部闇に溶けて見えなくなりそうな色をしてる。

 目に掛かりそうな前髪から目が覗く。白い肌から浮き出た黒い瞳がこっちを向く。いつもの細めた目より少し開けて、獲物が逃げないように視線で留めさせる。

 ゆっくり、上体を起こす。オレに座った姿勢になる。
 オレを見つめたまま、Rの唇が愉しそうに歪む。見下ろしたまま嘲っている。

「お前にはあれがペットに見えるのか?」
「………そうっすねぇ。」

 可哀想な奴らを思い出す。ペットは養われて愛玩される家族だけど、あれは……。

 考えて黙っていたらRが口を開いた。

「……なんでそんな駄目なの」

 Rが嘲笑を解く。
 冷めた目で見下ろす姿に不意打ちを喰らったけど、表情にはしない。

「…役に立ちたいんすよ」

 Rの手で壊されたアイツらも、役には立ってるのかもしれないけど。

「Rに支配されないで役に立ちたいんすよ……あれじゃ、玩具じゃないっすか」

 自然に声が震えてしまった。
 オレの様子の何が気に召したのか、Rの口角が片側だけ上がる。

 Rがオレから退く。
 逃げてもいいらしい。…なら。

「オレはRの物にならないっすよ」

 捨て台詞を吐いて出ていく事にした。
 最後に見えた表情は、何か企んでるみたいだった。


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考えたらコレRに読まれる可能性あるんすね、なんの羞恥プレイっすかそれは。

えーとこれどうやって締めたらいいんすかね?
さよーならー次は多分魔羽に戻ってるっすよー。